帰国中学入試
帰国中学入試の現状
海外に住む日本人子女数は年々増加しており、現在約8万人を超える小中学生が、現在海外で生活しています。それに伴い、帰国生を受け入れる学校も増えており、直近では首都圏の私立中学・約300校強のうち約200校程度が帰国生入試を行なっています。
しかし、帰国生への期待や温度感は各学校によってバラバラなのが実情です。帰国生を積極的に受け入れ、帰国生が活躍できる環境を熱心に整える学校もあれば、一般入試の『おまけ』として帰国生入試を行う学校も少なくありません。
そのような中、近年、国際系中学と言われる英語や国際教育などに重きをおく学校の存在感が増してきています。(向こう数年においても、複数の国際系中学が新規開校予定)海外大進学や英語教育に力を入れる学校方針と帰国生の志向性は合致しやすく、帰国生の間で人気が高まっているのです。
結果、帰国生入試においては、上記のような国際系中学などの一部の学校に人気が集中する一方、帰国生が全く集まらない学校があるなど、二極化事象が起きています。
受験資格
帰国生入試を受験する場合、基本的に海外滞在期間や帰国時期などの受験要件があります。各学校によって、要件の内容は異なりますが、多くの学校では下記要件が採用されています。
海外滞在1年以上、帰国後3年以内
最新の募集要項は、例年7月〜9月頃に公開されますので、資格要件は公開され次第、すぐに確認しておくと良いでしょう。(実は、資格要件を数ヶ月程度満たさない程度であれば、学校に個別相談することで受験ができるようになる場合があります。)
また、『帰国生入試』ではなく、『国際生入試』として募集することで、国内のインターナショナルスクール卒業生や英語が得意な国内生も、帰国生と一緒に受験できるケースが増えてきており、入試激化の一因となっていると言わざるを得ません。
国内インター生や英語が得意な国内生向けに、帰国生入試とは別に一般入試における英語型入試が増加していることにも触れておきます。首都圏模試センター調べによると、2022年度入試においては、146校もの学校が英語入試を実施したそうです。
実際、慶應義塾湘南藤沢中等部では2019年度以降、帰国生でなくとも英語受験ができるようになり、帰国生入試の資格要件を満たさない早期の帰国生など含め、英語型入試が徐々に浸透してきています。
帰国生入試の日程
帰国生入試は、主に10月〜2月にかけて随時実施されます。一般入試は主に1月以降に実施されるため、数ヶ月前倒しで入試が行われます。入試の実施形態も、ここ数年で下記の3種類に定着しました。
①オンライン ②海外(現地) ③国内(学校)
10月〜11月は、①オンラインや②海外(現地)実施が多く、11月下旬以降は、国内(学校)実施がメインとなります。そのため、海外在住の受験生の場合、①や②で併願校に合格をした上で、12月以降の③を受けるに一時帰国するという流れが一般的です。(コロナを発端に加速した①オンライン実施は海外在住の受験生のニーズが強いため、コロナ収束後も引き続き実施される可能性が高いでしょう。)
また、一般入試と同一日程で帰国生入試が行われる場合は注意が必要です。なぜかというと、同一日程の場合、入試問題が国内生と同じ問題を用いられる場合が多く、相当量の準備が必要となる出題になることが予想されるためです。
逆にいうと、数ヶ月前倒しで行われる帰国生入試の場合は、一部の学校(聖光学院など)を除き、問題の難易度は易化する傾向があります。その分、高い得点率や面接などが求められるわけですが、入試日程により問題難易度が異なることで準備内容も変わってくることにはくれぐれも注意を払わなくてはなりません。
受験校の平均校数
出願:5〜6校 受験:5校前後
帰国生入試の場合、一般入試より入試の実施期間が数ヶ月に及ぶため、多くの学校を受験することが可能です。ただし、第一志望校に向けて、適切に併願校選定を行なっていくと、平均5校程度の受験校に絞られます。当然、入学手続きの締切もありますので、入試時期は保護者のスケジュール管理が必須といえます。
帰国生入試の方式(3タイプに分類)
◆英語のみ
渋谷教育学園幕張や攻玉社、三田国際学園、洗足学園(A方式)や頌栄女子学院(A方式)などが代表校。英語のみの入試の場合、直前まで海外に滞在しており英検準1級以上の英語力を保有している受験生も少なくないため、正確な英語力とともに発想力や思考力、表現力などが問われる入試になります。
◆英語+算数+国語
慶應湘南藤沢、渋谷教育学園渋谷、広尾学園(インターAG)、海城(B方式)、洗足学園(B方式)、頌栄女子学院(B方式)、開智日本橋などが代表校。学校により、3科目の比重が異なることが特徴の入試方式です。3科目が均等配点なのか、英語重視なのかにより受験準備は大きく変わってきます。各校の科目比重の差異や試験内容に着目し、集中した対策や準備をすることで逆転合格が最も起きやすい入試方式といえます。
◆算数+国語
聖光学院、渋谷教育学園渋谷、海城(A方式)、広尾学園(本科)、立教池袋、学習院中等科、立教女学院、学習院女子、大妻、共立女子などが代表校。算数・国語の2科目受験の場合、日本人学校出身の生徒や現地校・インター校出身者も受験できるため、人気校ほど入試が激化する傾向があります。
例えば、聖光学院中の場合、帰国生入試の資格要件が『小学1年生以降の帰国』と比較的緩やかであるため、低学年から国内塾で相当量の準備をしてきた御三家(開成・麻布・武蔵)志望の男子受験生が集中して受験することになり、一般入試以上の入試難易度となります。
ただし、最難関校以外の学校については、一般入試と比べ基本的な内容の出題が多いため、各科目の典型問題を確実に得点できるようになることで合格点をクリアすることができます。
まとめ
帰国生入試は『情報戦』とよく言われます。巷には一般入試の情報はたくさん溢れていますが、帰国生入試における有益な情報はほとんどないためです。
帰国生が置かれる状況は、生徒によって全く異なるため、ある人には有益でも別の人にとっては全く役に立たない場合も少なくありません。(例えば、同じ帰国生でも、日本人学校出身か現地校・インター校出身か、いつ帰国したかなどで、現状において大きな違いが出てきます。)
だからこそ、帰国生入試にチャレンジする際は、学校や入試に関する『正しい情報』を集め、現状からどのような戦略を持って受験に挑むかが肝要といえます。
帰国高校入試
帰国高校入試の現状
帰国高校入試は、一般入試とほぼ同等の準備が必要になる点が、中学入試との大きな違いとなります。中学入試と比べ、一般入試と同日・同一問題で実施されることが多い帰国高校入試では、数学や国語を国内生とほぼ同水準で仕上げておく必要があるのです。一方、英語は一部の高校(渋谷幕張や広尾学園、三田国際など)を除き、英検準2級相当の語彙となるため高得点も狙いやすくなりますが、和訳や英訳など日本式の英語問題に戸惑い、思いの外高得点が取れない帰国生も少なくありません。第一志望校に向けて、どのように準備をするのかが大切になります。
受験資格
帰国生入試を受験する場合、基本的に海外滞在期間や帰国時期などの受験要件があります。各学校によって、要件の内容は異なりますが、多くの学校では下記要件が採用されています。
海外滞在1年以上、帰国後3年以内
最新の募集要項は、例年7月〜9月頃に公開されますので、資格要件は公開され次第、すぐに確認しておくと良いでしょう。(実は、資格要件を数ヶ月程度満たさない程度であれば、学校に個別相談することで受験ができるようになる場合があります。)
帰国高校入試において、特に気をつけなくてはならないのが、学校によって中学3年課程を修了しておかなくてはならない点です。例えば、アメリカ在住の受験生が現地校での学年を一年下げている場合、卒業が高校受験が終わった高1の6月の時期となるため受験資格がないと見なされてしまうのです。
具体的な学校を挙げると、国立東京学芸大学附属高校や慶應義塾高校などは、中3課程(Grade9)を修了しているかが要件となっているため注意が必要です。
そのような資格認定が厳しい学校を志望する場合は、日本人学校や国内の公立中学などに編入した上で卒業資格(見込)を得た上で受験しなければならず、前もって入念な準備をしておかなくてはなりません。
帰国生入試の日程
一般入試が1月から2月に入試があるのに対し、帰国生入試は、10月から2月にかけて随時実施されます。
帰国中学入試とは異なり、帰国高校入試の場合、一般入試がベースになる点が特徴です。
特に、帰国生のみを対象とした帰国人気校※の入試が集中する1月と一般入試と同日実施となる2月以降に受験生は集中します。※ICU高や渋谷幕張高、中央大杉並高、中央大附属高(24年度〜)、青山学院高など
受験校の平均校数
平均受験校数は、5〜6校程度が一般的です。海外在住の受験生は、11月頃から始まる海外実施の入試やオンライン入試、書類選考入試から受験することになります。次に、本帰国済みの受験生も11月以降の会場実施の入試から受験が始まります。
特に、年内の入試では、三田国際学園や広尾学園、広尾学園小石川、ICU(推薦)、法政国際などの受験生に人気の学校が複数入試を行います。
志望校を選定する場合は、①安全校、②実力相応校、③チャレンジ校 と分けて検討する必要があります。具体的には、①安全校1校、②実力相応校2校、③チャレンジ校3校などと位置付け受験すると良いでしょう。